中沢直紀

メール、ブログやSNSに掲載した文章、写真、動画……。 私たちが日々、発信している大量のデジタルデータは、ネット上のコンピューター・サーバーに蓄積され、増える一方だが、自分の死後、どう扱われるのだろう。実は、ITサービスの運営会社は利用者の死亡を想定していない場合が多く、故人の「デジタル遺産」が不本意な形でネット上に残り続けたり、相続を求める遺族と運営会社がトラブルになったりするケースが出ている。 家族に知らせずに開設されていたブログも多い。遺族らの申し出がない限り、死亡を知るすべがないのが現状だ。 一方、一般には公開されないメールやSNSの記録、データ保存サービスの文書や画像を巡って、運営会社に開示を求める遺族からの相談が増えている。「亡くなった親がお世話になった人の連絡先を知りたい」「思い出の写真が残っていないか」などのほか、「子供が自殺した理由を知りたい」という要望もある。 パスワードを再発行してアカウントの継続利用を認める運営会社も一部あるが、「電気通信事業法の『通信の秘密』に抵触する」(ヤフー)、「家族に知られたくない可能性もある」(ミクシィ)として応じないのが大半だ。 「アカウントは本人だけの『一身専属制』のもの」(ニフティ)とみなし、生活保護の受給権などと同様、財産のような相続の対象にならないと解釈している。